ラッキーボーイ

「嬉しい」…日本人初のカンヌ男優賞は弱冠14歳の新人俳優!

 第57回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門受賞式が22日(日本時間23日未明)行われ、是枝裕和監督の「誰も知らない」に主演した新人俳優、柳楽優弥=やぎら・ゆうや=が史上最年少の14歳で男優賞を受賞した。日本人が同賞を受賞するのは初めて。最高賞のパルムドールにはブッシュ政権を批判した米マイケル・ムーア監督の「華氏911」が選ばれた。 〔写真:快挙を成し遂げた柳楽優弥は大勢の報道陣に囲まれ緊張気味。仏滞在中の是枝裕和監督からの国際電話には笑みがこぼれた=東京・渋谷区=撮影・奈須稔〕


 弱冠14歳の新人が、カンヌの大舞台で快挙を成し遂げた。この日、柳楽は都内で会見し「(同作品が)初めてのオーディションで初めての演技なのに、カンヌで賞を獲るなんて2度とないかも。嬉しくてたまらない」。歓喜の声をあげつつも、緊張した表情には、少年のあどけなさが残る。

 都内の公立中3年で部活はサッカー部。12日にカンヌ入りしたが、中間テストを控えていたため勉強道具を持参。16日に帰国し17日に受けたテストの結果は「全然ダメでした」と苦笑いしたが、カンヌでは最高の成績を収めた。22日夜は都内自宅近くの祖母宅に母親と泊まり、CS放送の受信機がある叔父宅から電話で現地からの中継の模様を聞いていたが、「絶対起きている」つもりだったのに熟睡。「3時頃お母さんに起こされて知った」と第一報は寝ぼけ眼だった。

 一昨年夏に「友達がやっていたからいいなぁ」と思い立ち、自ら履歴書を送り芸能事務所入り。約1カ月後、難航していた同作の主役オーディションを受けたところ、是枝監督が「目の印象が強い」と気に入り即決。同秋から約1年の撮影に臨んだ。その間、身長が12〜13センチも伸びた。

 作品は、実際に起きた事件をモチーフに、母親に見捨てられた父親の違う兄妹4人が、自分たちで生きていこうとする姿を見つめたドラマで、柳楽は長男役。母を責めず、幼い弟妹を懸命に支え守ろうとする12歳を好演し、審査員の仏女優、エマニュエル・ベアールに「心からのキスを贈りたい」といわしめた表現力を見せた。

 現場では「台本は(渡され)なくその場で台詞を言われましたが、監督の教え方がうまいので緊張しなかった」と楽しそうに振り返った。日本は7月公開。「大人にこの映画を観てもらって『子供を簡単に捨てるな、おもちゃのように扱うな』と感じてほしい」と、カンヌを魅了したキリリとした瞳を輝かせた。

 途中、カンヌの是枝監督と電話がつながり「フランスでも好評だよ。(会見は)緊張しないで頑張れ」と激励されると何度も頷いていた。

 尊敬する俳優は「以前ドラマで共演した押尾学さん」。現在、テレビ朝日系「電池が切れるまで」(木曜後9・0)に出演中。7月以降もドラマに出演予定で、主演映画も1本決定。これからは誰にも「知らない」とは言わせない。

 一方、ほかの日本作品では、押井守監督のアニメ「イノセンス」、木村拓哉(31)が出演した香港映画「2046」(ウォン・カーウァイ監督)の前評判が高かったが、受賞は逃した。日本の同名漫画を原作とする韓国映画「オールド・ボーイ」(パク・チャヌク監督)が審査員特別大賞を受賞。主演のチェ・ミンシク「シュリ」で日本でも知られる存在だ。このほかタイ映画も審査員賞を受賞、アジア勢の活躍が目立った。




押尾チルドレンの誕生です。